三渓庵へどうぞ

高みにある数奇な萱葺き

萱葺きの、可愛らしい寓居である。こぼれるように咲いているのは桃の花。手前には枯山水。車の喧騒な通りから少し高台にある。
住むのは、『方丈記』の鴨長明か、『徒然草』の兼好法師か。無常の世を離れての佇まいである。

しかし、桃の花が散らないうちに写真を撮れと撮影位置まで教えてくれた当主は日暮孝三郎さん、柏市逆井の富士浅間神社の氏子代表、観音寺の檀家総代である。

母屋改築のときの古材で五分の一に復元

名づけて三渓庵。屋号の上三次郎の三をつける。私の宝物と言う。障子を開けて宝物の内部を拝見すると、何かの表彰の額がいくつもかかっている。その真ん中に張継の漢詩の拓本がかかっている。

月落烏啼霜満天江楓漁火対愁眠
姑蘇城外寒山寺夜半鐘声至客船

そういえば日暮さんは、ご夫婦とも詩吟をやっていると言う。

障子を開けて、高みにある家から、月を眺め詩吟を聞きたいものである。なんと数奇な楽しみか。

この三渓庵、昭和49年に萱葺きだった母屋を現代風の家屋にしたとき、その古材を使って五分の一に再建したものだそうだ。

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