御神木あわれ

御神木の杉の老樹が枯れた。数年前から枯れていたようだ。倒れないように高いところをロープで支えていた。注連(しめ)をはってあがめられたのを見たことがない。逆井・富士浅間神社社殿の、向かって右奥にそびえていた老杉樹のことである。

神主が祈る

逆井の富士浅間神社、御神木は神の依代だった

神主が見えた。朝から強い雨が降っていた2月18日のことである。氏子の代表8人(内2人は伐採業者)が社殿の中で御祓いを受け、玉串を奉奠した。

外に出て、御神木に祈祷された。神主が撒く、2センチほどの四角の白い切麻(キリヌサ)が、ぱらぱらと地に舞いおり雨を含んだ。別に2本の老樹にも撒かれた。

これで神事は終わり、御神木は単なる枯れた杉の木になった。3月早々、3本とも伐採された。御神木だけは下部が3メートルほど残され、銅の帽子がかぶせられた。それがキラリと光り、威厳をただよわせている。

切れたスギ

神の降臨を迎え、神人和合が祭りだという。神は決して姿を見せない。何かの媒体に憑依(ひょうい)し、現れる。この憑座・依代(よりしろ)が、つまりは御神木なのだろう。御神体には、植物・岩石・山丘・動物など。植物では常緑木が重んじられたという。

逆井の富士浅間神社は鎮守・ウブスナ(産土神)様で、祭神はコノハナサクヤヒメ。祭りは7月15日。氏子で富士講を組織しており、7月末に代参を立て、富士吉田の浅間神社からお札を受ける。

美人だったコノハナサクヤヒメ

コノハナサクヤヒメには姉にイワナガヒメがいて、二人揃ってニニギノミコトに献上された。コノハナは美人だったが、イワナガは醜かった。ニニギは姉だけ返上した。コノハナは花の咲くごとく繁栄するが、姉には永遠の命があった。姉を返上したため、御子の命は、木の花のようにはかなくなった。新開地住民は、浅間神社で、何を祈るべきか。