米作りの図

八十八の農作業

農家の居間に、「米作りの図」が額に入って飾ってある。何回か見上げるうちに、昔はそういう作業もあったな、と思うようになった。懐かしい稲作図である。雅拙ではあるけれど、昔ながらの米作りの過程を伝えており、絵一枚の中に八十八の作業をたくみに盛り込んだ。

これが八十八たび手のかかる農作業
描いたのは、松戸から逆井に嫁いだ人で、まだ、農作業が機械化しないころの話ー記録でもある。一枚ずつ描いて小学校などに届けたという。

農業の機械化は、あっという間に旧来の農作業を崩壊させ、ゼロにした。米作りの図は、郷愁のにじむ一幅の絵になった。

米という字を分析すれば、八十八たびの手がかかる

お米ひとつぶ粗末にゃならぬ、米はわれらの親じゃもの

そういう詞が書き込まれている。そして言うのである。「たんぼは土で作る、畑はこやしでつくれ」

この農家では、ゴールデンウイークに二町の田植えを終えた。トラクター、田植え機、コンバイン、乾燥機、精米機などが揃い、米作り工場が完備している。

再び図のこと。

千歯こきを使って脱穀をしている。足踏み脱穀機はあったはず。これは種子用の籾をていねいにとるためだったという。