「断る力」を身につけよう!? カツマー対カヤマー

カツマー対カヤマー

成功を目指すか、ほどほどの人生か

三毒(怒り、ねたみ、愚痴)から脱却し、自分の人生を果敢に切り開こうとする「カツマー」という人たちがいる。経済評論家の勝間和代さんのベストセラー「断る力」の内容を信奉するファンのことで、望まないことにはNOと断る力を発揮し、適切な自己主張をして、自分が集中すべき仕事に全力を傾ける。

勝間さんは綿密に、自己啓発の手法を説く。この断る力の確立は、いわゆるアラサー=30代が眼目、そして40代後半は完成、50代からは仕事をまとめ、後進を指導するという。

わが老人クラブには身近な世界とは言い難い。しかし面白い。若いときに出会ったならば、勝間教則を実行してみたくなるような・・・。

このカツマーをたしなめるのがカヤマーである。「しがみつかない生き方」を書いた精神科医・香山リカさんは、「ふつうの幸せを手に入れる10のルール」を示し、カツマーの世界を目指さないよう忠告する。

努力を積み重ねるカツマー人生、
しがみつかずに生きようよ、とカヤマー

「断る力」,すなわち、望まないことにはNOということを相手に伝える。自分の得意分野を見つけ、それに努力と時間を注ぐ。自分の軸は他人との関係の中で、その価値が生まれる。相手を理解し、自分を理解し、先人の知恵を学んでいく。

こう抜き書きしてみると「カツマー」の人生対処法に難点はなく周囲にも配慮は十分である。ただ熟練労働者として、すさまじい努力の積み重ねが必要とされる。性格的に脱落する人もいるに違いない。始めから似合わないと思う人もいるはずだ。

ここに反論するカヤマーが登場するのは出版界の常識か。行き過ぎを引き戻す。カヤマーは「ふつうの幸せを手に入れるために10のルール」をたどる。自慢・自己PRをしない、仕事に夢を求めない、子どもやお金にしがみつかない、そして最後に、「勝間和代を目指さない」と、言い切っている。

がんばっても、向上心があってもうまくいかない人がいる。精神科医は、「ふつうにがんばって、しがみつかずにこだわらずに自分のペースで生きていけば、誰でもそれなりに幸せを感じながら人生を送れる。それで十分、というよりそれ以外の何が必要であろうか」と言う。