あの「ぞうさん」の詩人
まど・みちおさん 100歳詩集2冊

まど・みちおさん
右)「100歳詩集 逃げの一手」小学館発行 1400円+税
左)「のぼりくだりの・・・」 理論社   1300円+税

ぞうさん♪

ごりっぱなアルツのハイマチャン

俺…ときたらば
まあ
よくも
ここまで
生きてきた
もんだよなあ

上の詩集の中の一節である。
そのまどさんが、「ぞうさん」を書いたとき、一日の賃金が240円、インフレの時代。長男の七つの誕生祝に汽車のオモチャをせがまれた。買い物をあきらめたまどさんは、上野動物園へ連れて行く。レンガ造りのゾウ舎にまだゾウはいなかった。

「ここにね、とってもおおきなゾウがいてね」そのとき、息子がゾウに話しかけ、ゾウが応える形式の詩が浮かんだ。(朝日新聞社編「東京のうた」)

時流れて平成21年11月、まどさんは一〇〇歳になる。病院暮らしの、その誕生日に93歳の、車椅子の妻が駆けつける。NHKテレビが見せた。

日記を毎日つける。左の詩集に、「ニッキチョウ」という詩がある。

アタラシイ
ニッキチョウだ
がんばるぞと
りきんでみせても
あいては
カミさん
ただひとり
ごりょうにん
ともに
ごりっぱな
アルツの
ハイマチャン
こりゃアカンと
きづいても
もうフンづまり
ニッチも
サッチもで
めでたしや!

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