柔和な福の神
えびす大黒が大集合、270点
福徳をもたらすとして、家ごとに祀られて来たえびすさま、大黒さま。京橋のINAXギャラリーのガラス越しに勢ぞろいした、ただただ笑顔を見せている270点は、滋賀県八日市の市神神社からお出ましとなった。
ふくよかな、小さな体つきが生む笑いの中に包まれれば、幸福の秘密を納得できそうな気がして、しばし居続けては見たけれど。
みんな黒光り、ふくよかに、笑顔を見せ
海の彼方からやってきたえびす。夷や戎の字が当てられ、大漁祈願や海上安全を願う漁民の間で信仰される。大国主命の子の事代主命(ことしろぬしのみこと)と同一視され神社に祭られる。釣竿を持ち、自慢の鯛を抱える。
片や大黒天。そのルーツは、ヒンズー教のマハーカーラという戦闘の神、中国に伝えられ仏教に取り込まれ、食糧を守る神に変身、最澄が庫裏に飾ったそうで、出雲神話の大国主と習合(異なる教理を折衷・調和すること)し、大黒さまとして福の神となった。
いかにも福の神様のように、彫刻師は彫り上げたのだろう。その千姿万態には、福を希求した庶民の不幸の千姿万態が浮かんでくるような気がする。裏返しである。
この270体が、市神神社に集まったのは、改築などで神棚がなくなり、居場所を失って奉納されたためと聞くと、寂しい末路だとも思われてくる。
写真左上は、出雲大社の「繁昌さだいこくさま」