NHK介護百人一首
応募8332首、友人が入選
この「何か変…」で、NHK「介護百人一首」に入選した、流山の森ふくさん(74)は、10年来の友人である。習字の先生をしていて、柏市逆井の、仲町にも近い「いずみ園(身体障害者通所授産施設)」に毎週手伝いに来ていた。
森さんにも涙ぐましい介護人生があったことを初めて知った。50年前の話である。まだ、介護とか施設などのない時代だった。
60歳の姑さんと同居が始まり、家事いっさいをやってもらい、森さんも仕事に専念していたが、姑が64歳で食道がん、それに認知症が始まる。家族が協力しあっての介護だったという。介護9年の体験が、この一首となった。
介護9年、夫婦の本番に生かす
「姑は私をたいへん大事にしてくれた人です。認知症が始まったころ、よくこんなことを言っていました。自分でも理解出来なかったのだと思います」
森さんは詞書にこう書く。こんなこととは、「何か変」ということ、「頭を少したたいてみて」という。たたいたら音が出た。笑いあう義理の親子。それが本当の親子になった瞬間だったのだろう。
いつもズボンをはいて寝た。いつ異変が起こるか。介護9年、姑は73歳で亡くなった。ズボンを脱ぎ、寝巻きになって、そのゆったりしたことを実感した。森さんの、今の心境はこうだ。
今までの姑の介護はリハーサル
互いの介護はこれから本番
多様な介護人生、30歳から96歳も
8332首から選出された100の介護人生はさまざまである。
最高齢96歳の女性の一首。
罵詈雑言くりごと多き老人にジョークで答ふ若き看護士
「やさしく対処するいじらしさに感激」という詞書がつく。
連続入賞した66歳の女性は施設の職員らしい。
右マヒと左マヒとがすり鉢で擂りし豆腐で白和え作る
この女性は施設に歌の会を作り、その「生徒」二人が入賞する快挙。78歳と86歳の入選歌を並べる。
車椅子早朝よりの日課終えひと日の幸を片手で祈る
まだかしら園の居酒屋店開き美味しいつまみ思ってゴクリ
月2回ホームの居酒屋が開かれるそうである。話が弾む。
長崎被爆者から。子を連れて行ったのは昔、今は連れられて。
連れられて被爆健診うけにゆく子に握らるる手のあたたかし